法事で石川県の祖母宅に行く前に読み終えているはずが、現地から帰る時点でまだ上巻の1/3という状況だったのですが、ようやく読了。
日本経済新聞朝刊に連載されていた時代小説「等伯」上下巻です。
上下巻を読むのは、「
悪の経典」以来。
体力もいるし、面白くないと途中で浮気をしたくなるところですが、この1/3を超えたところからもう怒涛の展開。
長谷川信春こと、のちの長谷川等伯は、加賀国の七尾に暮らす絵仏師。しかし、兄が畠山氏の再興を狙った事件に巻き込まれ、絵仏師としての師匠でもあった義父母を殺され、一族から里を追われます。
人の出会いに巻き込まれ、助けられ、騙され、時には戦いながら、筆を踊らせる様。
有名な「松林図」(表紙にも描かれている松を対の屏風に描いた等伯壮年の代表作)の境地に達するまでに等伯が出会った織田信長、豊臣秀吉、千利休、近衛前久、石田三成・・・
多くの戦国時代を舞台にした小説とは違う、次々と権力者が変わることに翻弄される、民間人からの視点。
私がこれまで読んできたこの時代の小説が、複数の人物を俯瞰したものか、武将とその一族側からの視点のものだったので、徹底的に長谷川信春(等伯)という一般人の一人称で群雄割拠の時代を読むのも興味深かったです。